ディケンズ原作、ロマン・ポランスキー監督「オリバー・ツイスト」

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チャールズ・ディケンズ原作、ロマン・ポランスキー監督という事で期待していたのですが、少しガッカリでした。

公開時のコピーが、“涙のあと幸せはやってくる”だそうだが、この言葉に尽きるというか、この言葉以上でも以下でもありませんでした。
20数人いた観客のうち一人女の子が映画が終わった後、涙ぐんでいましたが、僕の心の内は感動とは程遠いものでした。

確かに失敗作ではないでしょうけども。


<ストーリー>
 19世紀イギリス。9歳になり、救貧院へと連れて帰られた少女のように美しい顔をし純真な孤児のオリバー・ツイスト。このオリバー・ツイストという名前は救貧院の委員に孤児達がAからZに適当に名前を付けられており、オリバー・ツイストはSの次のTから適当に付けられたもの。

しかし孤児たちの給食はみすぼらしく皆、飢えていました。お腹が減って隣の人を食べないように就寝時間、ベットサイドをうろうろする孤児がいるほど。




孤児たちは口引きで、夕食の席でおかわりを求めた係りを決めました。この係りを運悪く引いたのがオリバー・ツイスト。このことが委員の怒りを買い追放処分に。委員たちは豪勢な料理うを食べているというのに・・。

ここからオリバー・ツイストの苦難の半生が始まります。

葬儀屋の主人に一旦は引き取られるが、同じ雇い人のオリバーの母親の悪口から喧嘩になりオリバーは、ついに葬儀屋を飛び出し70マイル彼方にある大都会ロンドンを目指します。

そしてようやく辿り着いたロンドンでオリバーは、フェイギンが束ねる少年スリ団のリーダー、ドジャーと出会い、彼らと行動を共にするのだが…。

<感想 ネタばれ注意>

僕は世界文学をほとんど読んでいないのですが、この作品のように恵まれない少年が裕福で堅実な家に引き取られるという筋書きは中世の世界文学の一つのパターンのように多いのではなかろうか。

僕はこの「オリバー・ツイスト」を少年の物語としてではなくある時代の少女の物語として受け取りました。
なぜなら、オリバー・ツイストは何一つ自ずから進んで社会に働きかけるのではなく、自分に降りかかってくる災難をその純真さでひたむきに耐え、享受している様にしか見えませんでした。
時には反抗をしますが。




ディケンズもほとんど読んでいませんが、中世を舞台にした恵まれない少年の物語ということで成功物語を期待しましたが、オリバー・ツイストの成功とは裕福で堅実な家に迎え入れられるだけというものでした。

僕は途中、この恵まれた人が登場してから、オリバー・ツイストがこの家で商売か勉学の勉強を修め、立派に一人立ちするという物語を期待したのですが、期待はずれに終わりました。

これでは、一時代前の女性の「プリティウーマン」のように素敵で裕福な男性により自分が成功する価値観に裏打ちされた映画や恵まれない少女が裕福な家庭に迎え入れられてハッピーエンドというような中世文学と大差ないのではないのではないでしょうか?
そういう意味で、僕はこの「オリバー・ツイスト」を少女の物語として受け取りました。

ただ、ラスト近く悪党のフェイギンにひどいことをされたが時に親切にされた恩を忘れず、絞首刑が明日に迫っているフェイギンに面会に行って「一緒に神に祈りましょう。」と声を掛ける場面では胸に来るものがありましたが。

いずれにせよ非常に作家性の強い作品を作り続けいるロマン・ポランスキー監督が「戦場のピアニスト」でアカデミー監督賞を受賞した後、なぜこの作品を選び撮ったのか僕には理解できませんでした。

ポランスキー自身の少年時代は両親がアウシュビッツ収容所に送られ、苦難の幼少を送ったのですが、その苦難がこの「オリバー・ツイスト」にオーバーラップさせられますが、ポランスキーが少年の希望とはこんなものだったのでしょうか?




トグサ的評価:★★★☆☆

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7 thoughts on “ディケンズ原作、ロマン・ポランスキー監督「オリバー・ツイスト」

  1. >通りすがりさん
    ご指摘ありがとうございます。
    何度も“中世"という言葉が出てくるのを、自分で読み返していて恥ずかしかったです^^;

    ご指摘のように明らかに近代ですね。

  2. 世の中にはすごい人がいるもんですよね

    冬はやっぱりスキー、スノボーで気持ちよ~くすべるのが楽しいですよね。しかしゲレンデに宿泊するのにもお金が掛かるわけだし、ウェアだって最新のものが欲しくなる。スキーの板やスノボーの道具など、全部揃えたらすぐ十○万円です。なかなか払えないですよね…

  3. 映画『オリバー・ツイスト』

    原題:Oliver Twistこんな、いたいけな少年をいじめ痛めつけるなんて、なんて身勝手な大人達、時代が時代とはいえ、可哀そう、さすらう少年の心に安らぎの日々は来るのか 19世紀の、イギリスもまた貧富の差が激しかったころ、孤児のオリバー・ツイスト(バ

  4. cyazさん、はじめまして^^
    僕もバーニー君やキングスレーの演技や19世紀のロンドンの再現は素晴らしいものだと思います。

  5. TBありがとうございましたm(_ _)m

    僕もイマイチ感動が薄かったんですが、それでもバーニー君やキングスレーの演技は素晴らしいものだったと思います^^

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