黒澤監督の遺志を立派に継いだ小泉監督「博士を愛した数式」

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黒澤明監督の映画には、“黒澤ヒューマニズム”といわれるようなヒューマニズムがあった。

「生きる」にしろ「赤ひげ」など、そこには辛口のヒューマニズムがあった。しかし、「まあだだよ」にみられるような晩年の作品には少し押し付けがましいヒューマニズムやメッセージ性が高すぎるような作品が多くなって来たように僕は感じます。



僕が若かった頃の黒澤監督は、「影武者」や「乱」などを撮っており、巨匠と呼ばれているけど時代劇を撮らしたら面白いただのおじいさん監督というイメージでした。

今の若い世代は、黒澤作品などほとんど観てないのではないでしょうか。



その後、リバイバルで「七人の侍」ビデオで「白痴」「生きもたちのの記録」「デブラ・ウィザーラ」などの過去の作品を観て、世界にまたとない巨匠であると認識を新たにしました。

日本ではあまり敬意を現されていないような気がして残念でならないのですが。







さて「博士の愛した数式」ですが監督の小泉堯史監督は、「乱」以降の作品で黒澤明監督の助監督を務められていた方です。

デビュー作品も黒澤監督の脚本の「雨あがる」でした。まあまあいい作品でした。



この「博士の愛した数式」は、黒澤監督が晩年描こうとしたほのぼのとした人間模様にあふれています。

“こんな真心が通じる世界”と僕は思わず二度ほど涙ぐんだほど。



この映画は書店員が決定する第1回本屋大賞を受賞した同名小川洋子原作「博士の愛した数式」を小泉堯史監督自身が脚色したものです。

僕の原作の紹介はコチラシネマつれづれ日記 | 話題の「博士の愛した数式」を読んでみた#sequel

博士の愛した数式

博士の愛した数式

小川 洋子

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ストーリーは数学の先生になった吉岡秀隆が生徒たちを前に自分が数学を目指すようになったキッカケとなった博士(寺尾聰)を中心にした自分(ルート)とその母親、深津絵里を底辺にした二等辺三角形のような関係のほのぼのとした心温まる人間模様を描いています。



原作では、素数、完全数などのような純粋数学の用語はいちいち説明されていませんでしたが、映画では吉岡秀隆が生徒に黒澤明監督の助監督を務めていた小泉監督らしい言葉を用いて説明する形で観客に伝えます。

この伝え方が上から教えるという形ではなく、やさしい言葉を用いて“教え伝える”という感じで非常に好感が持てます。



博士(寺尾聰)が初めてお手伝いの深津絵里に会うシーンで、多分、誕生日の数字だったかを「なんともいさぎよい数字だ。」と語る寺尾聰の言葉を聞いた時、なんか時代劇のようで違和感を僕は持ったが、このセリフは原作にもあるそうだ。



原作も、ほのぼのとした心温まるものだったが、映画はそれ以上だ。

博士(寺尾聰)の“80分しか記憶を持てない”障害は、原作では“設定”というか“仕掛け”としか感じなかったが映画版「博士の愛した数式」では、その障害が恨めしく思えたほどだ。



それは、博士を演じる寺尾聰の博士の純朴さや朴訥さをにじみませた味のある演技と深津絵里の自身のキャラクターを生かした純粋さを表現した演技によるものであり、小泉堯史監督の脚色によってもたらされています。

寺尾聰は、ますます渋みを増してい、演技に円熟味を感じます。



原作は“数学の美しさ”を謳いあげていたが、映画版「博士の愛した数式」では小泉堯史監督は“言葉の持つ素晴らしさ”を謳いあげていました。

例えば、ルート少年に会うたびに博士(寺尾聰)は、「君の頭はかしこい心にあふれている」というセリフをはきますが、この“かしこい心”というところが味噌で、昨今の流行りの“頭がいい”とは一味違います。



僕が涙したのは、原作では阪神戦を観に行く所を、ルート少年の少年野球チームの試合を観に行くというふうに小泉堯史監督が設定を変更した場面で、ルート少年のチームの背番号を深津絵里の機転で博士(寺尾聰)が知っていた時代の阪神の選手の背番号にしたところでした。もちろん、ルート少年の背番号は“√”。

その深津絵里の“真心”に打たれたのでした。



もう一つはラストシーンでした。



これは原作にもある場面なのですが深津絵里が料理しているところを博士(寺尾聰)が興味深そうに色々質問しながら眺める場面もなんだかほのぼのさせられいいシーンでした。



残念なのは、原作にあった博士の江夏豊に対する熱い思いが映画では、あまり伝わってこなかったことでしょうか。

いずれにせよ、今年は始まったばかりですが今年度のベスト上位に食い込みそうな映画には間違いないです。



トグサ的評価:★★★★★



原作にはなかった浅丘ルリ子演じる深津絵里に対するジェラシーを上手く描写した小泉堯史監督には、ぜひ次回作は大人の恋愛映画を撮ってもらいたいです。



プチッと押してください。

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28 thoughts on “黒澤監督の遺志を立派に継いだ小泉監督「博士を愛した数式」

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  7. 「博士の愛した数式」、舞台に

    小川洋子氏の原作で、映画化されて大ヒットした「博士の愛した数式」(7月7日にDVD発売)が舞台化されることが分かりました。詳しくはDailySports onlineをご覧ください。     「博士の愛した数式」のDVD、7月に発売 4月4日   「博士の愛した

  8. ダヴィンチ・コード
    カンヌでの評判は いまいちみたいだね
    難解すぎるのかな?

  9. そうなんだけど、今年はないなあ。
    僕は6月に「ダヴィンチ・コード」、友達と観に行くつもり。

  10. 死魔さんも情報通ですね。
    行きたいけど遠いや^^;

  11. 福井県立美術館で「黒澤明アート展」が 5/21まで開かれているそうです
    監督直筆の 絵コンテ等が展示されているみたい

  12. 死魔さんも情報通だね^^。
    先生は皆、黒澤組らしいね。
    映画学校も沢山出来たね。
    俳優学校はまだまだ少ないけど。
    僕も期待してるよ。

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