森田芳光監督「ハル」レビュー

(ハル)
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この映画が作られた当時、僕もパソコン通信をしていた。
映画が作られたのは、もう少し後だったかも知れない。
あー、新しもの好きの森田監督が、あざとく作ったなてな感じでスルーした。

NHKが、心温まるメールのやり取りをしている相手が、実はおばさんだった、で、そのおばさんも本当のことを言えない、みたいなドキュメントを作っていた時代だった。

ストーリー

パソコン通信によって見知らぬ男女が出会い、恋が生まれるまでを描いたラブストーリー。

(ハル)というネームでパソコン通信の映画フォーラムにアクセスを始めた速見昇は仕事も恋もうまくいかず鬱屈していた。

そんな彼に(ほし)というネームで励ましのメールが届く。
その日から、2人はメールを交換し始め、本音を伝え始めるようになる。

そして(ハル)は会うことを提案するが……。

スクリーンに映しだされたメール文字だけでなく、2人の距離感をみずみずしく描いた森田演出が際立つ。

スタッフ

監督 森田芳光




製作
青木勝彦、三沢和子、鈴木光

撮影 高瀬比呂志

音楽 野力奏一、佐藤俊彦、祐木陽

美術 小澤秀高

キャスト

深津絵里
内野聖陽
戸田菜穂
宮沢和史
竹下宏太郎
鶴久政治
山崎直子
平泉成

作品データ

製作年 1996年
製作国 日本
上映時間 118分

映画.com より

感想

20代だった僕も、その少し前、肩書き女子校生の子と仕事が終わって家に帰って、メール交換なんかをしていた。

出会い系が流行る5年以上前だったので、誰もが、肩書きを詐称するような時代では無かった。

登場人物は、元アメフト選手の営業職の(ハル)。

彼氏が急死し、男友達にしつこくつきまとわれている、村上春樹を愛する(ほし)。

映画のチャットルームで知り合った二人は、かつてそうであったように、文通のようなメールのやり取りが続く。




村上春樹作品に登場するような、目の涼しげな(ハル)の彼女は、村上作品のように、あっけなく失踪するように、海外へ行く。

突如として登場して、すんなり、(ハル)に会う、お騒がせな(ローズ)。

80年代。

かつてのメール交換が、文通の延長だったように、二人は、メール交換で内面的に心を通わせる。

ドラマのない、淡々と続く現実。

時折、差し込まれる電車。天気予報の電光掲示板。

映画的雰囲気、ムードが、村上春樹的なら、面白かったろうに。
だけど、主題歌のJazzは、全然、春樹的じゃないな。
なんて、考えていた。

メールの文面の背後は、音声入りの働いている姿がいいなとかも。

はっきり言って、映画的盛り上がりに欠ける。

でも、凡作は凡作でも、意味のある凡作であると思う。

僕が、大学生の頃、すでに、映画を撮っていた森田芳光監督で、僕より、一世代上なのですが、なんだか、特に最近、同世代のように思う。




新しもの好きで、才気ある映画を作る監督でしたが、最近、彼のように、新しいツールに敏感に反応する監督が少なくなって来ているように思う。

SNS真っ盛りの昨今ですが、今でも、LINEとかで、グループ交流の青春映画、そして、やっぱり、緊張感溢れる犯罪映画とか撮れると思う。

久し振りに、ネット用語の”落ちる”の意味を思い出したり、あー、そう言えば、パソコン通信の携帯が普及していない時代、英字新聞とかフロッピーディスクとか目印になる物、持って出会うのが通例だったなぁとか、想い出せただけで、見て良かったです。

そして、映画は、映像でも音楽でもなく、文学であるとも確認できて。

 

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